Yoshitaka Arita Architect Office

幕張の家

House in Makuhari|千葉県千葉市
  • photo by Shinkenchiku-sha
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幕張駅の東側には、臨海埋立て地の新都心とは対照的な風景が広がっている。点々と畑が残るこの地区では、何十年か越しの土地区画整理事業がようやく動き出し、夫婦と10代のふたりの子供、そしておじいさんの5人家族は、古くなった家から50mほど離れた場所に新しい家を建てることになった。
敷地は北側前面道路で東西に長く、南側を含め周囲には将来3階建て程度の建物が建つことが予想される。そのため広い庭を東側に配置することから、敷地と建物との関係を組み立てた。
当初、建築主より外壁を木で張りたいとの要望があったが、法規や予算的な条件を考慮し、軒裏、樋隠し、建具、戸袋、雨戸、格子、手摺、といった部分を大きくとり、木を使うことにした。そして、これらを雨から守るため屋根の庇を大きく延ばした。建物は建ぺい率30%以下でコンパクトに納まっている。この、ある意味贅沢なバランスが軒を四方に深く延ばすことを可能にした。屋根は寄棟で、軒裏に広く水平な木の面を見せている。軒の出は建物を雨から守り、夏には大きな影を落す。そして建物の足元に柔らかな包容力を生み出しながら、3世代5人で住むこの「家」の印象を作り出している。
内部は緩やかな二世帯住宅の構成をとる。おじいさんの独立性を保ちながら、各室が吹き抜けによって連続しており、天井の高い広間がこの家の重心である。小さな住宅ではあるが、広間は少し生活臭を削ぎ落した空間として提案した。一日の中でも、あるいは年月が経てもその空間の質を保っていられるような場所を1か所用意することは居心地のよさや生活のしやすさにもつながると考えた。東の庭に面して、建具を戸袋に引き込める大きな開口をとり、南の壁の高い位置に明かりとりの窓をとった。広間では視線は庭に向けて水平に抜け、頭の上に白い空間が浮かぶ。
この住宅では雨戸、網戸、樋、といったものを含め、日本に住むための形を慎重に配置することを考えた。そしてそれが単純に和風であるとか民家風であるとかいうのではなく、この住宅らしいバランスを持って家の佇まいがつくり出されることを目指した。