軒先で小さな園芸店を営む住宅の建て替えである。主な要望は、可愛さがあること、和風に見えないこと、古民家っぽさがあること、だった。これらを踏まえながら、建物が装飾的でフェイクなものにならないよう留意し、実直な解法の積み上げによって自ずとこれら3つの要望が実現されているような状態(=建築)を作り出すことを試みた。そういう在り方のほうが、飾らない人柄の住まい手に似合ったものになるだろうと考えた。
住まい手は60代夫婦と娘さんである。当初、主寝室は2階で良いという要望だったが、将来の事を考え1階に配置する提案をした。それにより2階が1階よりも小さくなったため、その凸型ボリュームを包み込むように、おおらかな切妻屋根で全体を覆うことにした。この屋根の形は、周囲の街並みにも馴染むように思えたし、建物を見る人に分かりやすく親しみやすい印象を与え、「可愛さ」や「古民家っぽさ」という要望にも違わないと考えた。その上で、住宅+店舗という2重のプログラムを変形敷地内に破綻なく収めるよう試みた結果、平面形は平行四辺形となった。2階物干しバルコニーを南面させると店側に面してしまうため、目立たぬよう屋根面に埋め込んだ。
老後の生活に備え、敷地高低差を活かして前面道路から1階床までバリアフリーでアクセスできるよう計画した。空調効率を高めたいという要望により吹き抜けはない。そのかわり階段室を1階から2階への光と風の通り道とし、1階寝室の風抜き窓を階段室に対して設けている。2階は小屋裏である。天井の高い部分が娘さんの寝室と水回り、そして、吹き抜けを取らなかった事で生まれた広い小屋裏空間を活かして小屋裏収納と物干しバルコニーとした。気積の大きな小屋裏収納は換気装置を備えた断熱空気層としても機能している。2階寝室は物干バルコニーに対して風抜き窓をとっている。
園芸店は向こう10年程度営業される予定である。間口6mの広いポーチが主な接客スペースで、「玄関土間」は住宅玄関と店舗の応接スペースを兼ね(玄関土間は猫の住まいでもあり、庭から自由に出入りできる小さなキャットドアが設けられている)、「バックスペース」は住宅玄関収納と店舗オフィスを兼ねている。庭と店舗では井戸水を使用、その井戸水を濁らせないよう地盤改良は鋼管杭で行った。
費用面では、工法を工夫すること、そして表と裏をはっきりと分け、割り切る部分を作ることでコストを抑えた。
以前からここで営まれてきたこの園芸店では、1時間以上おしゃべりして帰る客が珍しくなかったという。そのような「小さな公共性を持つ住宅」とそれを担う住まい手が、敷地縮小を伴う建て替えを経て、これからも変わらず地域に親しまれ続けることを目指した。